この記事は、床・壁・家具・インテリアを選ぶ前に、
考え方を整えるためのメモです。
部屋の照明を少し変えるだけで、空気がそっと沈み込み、
自分の呼吸がゆっくり整っていく瞬間があります。
一日の終わりに、小さな灯りをひとつだけ点ける。
「あ、今日を終えていいんだ」と心の奥がほどけていく。
照明は、ただ明るさを与える道具ではなく、
暮らしのリズムを整える“静かなスイッチ”なのだと感じています。
光の“高さ”で、気持ちの速度は変わる
一人暮らしをしていた若い頃、
思い切って天井の中央にあったシーリングライトを外し、
スタンドライトで光源を低めに置く暮らしに変えてみました。
それだけで、夜の時間の質が驚くほど変わったことを今でも覚えています。
食卓、ソファ横、ベッドサイド。
必要な場所に、必要な分だけ光を置くと、
部屋が“用途”ではなく “居心地”で区切られていく。
初めてペンダントライトを少し低めに調整した夜なんて、
影の落ち方があまりにきれいで、しばらく動けなくなるほどでした。

部屋の“時間”に合わせて光を変える
最近は、ダウンライトを
朝・夕方・夜で 調光/調色するようにしています。
・朝は白く澄んだ光で、そっと背中を押す
・夕方は色温度を落として、気持ちをほどく
・夜はオレンジがかった弱い光で、思考が静かに沈む
光の色が整うだけで、
心の速度までゆっくり緩んでいくのです。
デンマークで見た“光の重ね方”が忘れられない
数年前、デンマークのある家で食事に招かれた夜。
その家の照明の使い方に、静かな衝撃を受けました。
部屋全体はうっすら暗いのに、
テーブルには小さなペンダントがひとつ、
周りには揺れるキャンドル。
壁際には弱いフロアライトがひっそりと置かれているだけ。
どの光も主張しないのに、空間が深くて温かい。
光はたくさんあればいいわけじゃなくて、
どんなふうに重ねるかで、
「ここが落ち着くな」と感じる場所ができる。
そんなことを教えられたようでした。
自宅のリフォームの際、
光の高さ・色・方向にこだわったのは、
あの体験が大きく影響しています。

壁を照らすと、素材の魅力がゆっくり浮かび上がる
珪藻土のざらりとした陰影、漆喰のゆらぎ、木の年輪の立体感。
直接光では見えにくい表情が、間接光でそっと浮かび上がります。
そして壁をやわらかく照らす光には、
“ホテルライクな非日常”を自宅に連れてくる力があります。
素材本来の美しさが際立つので、
普段の延長線上で暮らしながら、
どこか静かなラウンジで過ごしているような気分になる。
ある晩、木の壁に間接光を当ててみたとき、
その影の深さに心がすっとほどけました。
照明を整えているのに、癒されているのは自分のほう。
そんな感覚が忘れられません。
光は“足す”より“引く”ことで豊かになる
昔、照明を欲張って置きすぎたことがあり、
部屋がどうも落ち着かない時期がありました。
思い切ってひとつ消してみたら、
空間が息を吹き返したように静まりました。
必要な光だけを残すことで、
その場に漂う気配が穏やかになる。
今はそんな“引き算の光”を大切にしています。
自分らしい光と暮らすということ
背伸びしすぎず、けれど素材や造形に少しこだわる。
毎日見ても飽きないどころか、時間とともに愛着が深まる。
そんな照明がひとつあるだけで、
家は驚くほど静かに整っていきます。
光を整えると、暮らしも整う。
これは、照明と長く付き合ってきて気づいた私なりの実感です。
このメモが、次に何かを選ぶときの、
静かな判断材料になればうれしいです。


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