この記事は、床・壁・家具・インテリアを選ぶ前に、
考え方を整えるためのメモです。
「神は細部に宿る。」
近代建築を代表する建築家、ミース・ファン・デル・ローエの言葉として、あまりにも有名な一節です。
床と壁の境目。
ふだんはほとんど意識されないけれど、
実は空間の印象を静かに左右している場所でもあります。
床と壁をつなぐ、巾木という存在
床と壁を切り替えるための納め部材、巾木。
仕上げの都合上、基本的には必要な存在です。
最近は、「マイクロ巾木」と呼ばれるような、
背の低い、目立たない巾木を選ぶ住まいが増えてきました。
ヨーロッパの邸宅のように、
高さがあり、装飾の施された巾木も、
それはそれで雰囲気があって、格好いい。
ただ、
シンプルでミニマルな空間を好む日本の住まいでは、
少し主張が強すぎると感じる場面もあります。
巾木の高さが、空間の時代感を左右する
たとえば、高さ60mm前後。
従来よく使われてきた、一般的な巾木です。
それ自体が悪いわけではありません。
ただ、それだけで
空間が少し古く見えてしまうことも、正直あります。
逆に言えば、
巾木を控えめにするだけで、
部屋全体がすっと軽く、今の空気に近づく。
大きなことをしなくても、
ディテールをひとつ見直すだけで、
空間の見え方は驚くほど変わります。
見切りもまた、空間を整える存在
床材や壁材の切り替わりに使われる見切り材も、
巾木と同じくらい、印象に影響するパーツです。
最近は、
細い金物の見切り材を使って、
境界線を必要最小限に抑えた納まりを見かけることが増えました。
「ここで切り替わっていますよ」と主張するのではなく、
ただ、静かに役割を果たしている。
そんな見切りが、空間全体をすっきりと見せてくれます。
指定しないと、決まってしまう部材でもある
巾木や見切りといった造作材は、
新築やリフォームの際、
こちらから指定しないと
施工会社側の標準仕様で決まってしまうことが多い部材です。
工事が進んでから
「やっぱり違うものにしたい」と思っても、
変更が面倒だったり、追加費用がかかったりすることもあります。
だからこそ、
最初の打ち合わせの段階で、
「巾木は目立たないものにしたい」
「見切りは細い金物で納めたい」
そんな希望を、ひとこと伝えておくと安心です。
小さな違和感は、あとから残る
実は、自宅のリフォームで、
一部屋だけ見切りに少し大きなものが入ってしまった部屋があります。
完成した当初は、
「まあ、そこまで違和感はないか」と思って、
あえて指摘もしませんでした。
暮らしていて大きな不満があるわけではない。
ただ、ふとした瞬間に、
「ここも、もう少し控えめだったらよかったな」と思うことがあります。
直すほどではないけれど、
完全に忘れられるわけでもない。
そんな小さな後悔が、今も少しだけ残っています。
造作材は、後回しにしないほうがいい
巾木や見切りといった造作材は、
どうしても最後のほうに決めがちです。
目立たないけれど、
目に入らないわけではない。
その積み重ねが、
「なんとなく整っている空間」をつくっています。
神は細部に宿る。
その言葉を、住まいの中でいちばん静かに実感させてきれるのが、
巾木や見切りなのかもしれません。
このメモが、次に何かを選ぶときの、
静かな判断材料になればうれしいです。


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